Impression~心の声
その一件から3ヶ月がたったとき。この歌はオリコンでも上位に入った。でもそんな時だった、また彼が私のところに訪れたのは。なんだか体調も優れない感じに見えた。顔色が悪かった。   
彼は私に弱音を見せた。戻ろうって、よりを戻そうって、、。私は出来ないと答えた。静かに横に首を振った。
〝あなたが死んだって全てが戻ることは無い〟私は静に彼にそう告げた。すると彼は私の部屋に上がり込みキッチンから果物ナイフを持ってきた。とても怖かった。
そして彼は言った〝だったらこれで俺を殺せ〟と。もしかしたら酔っていたのかも知れない、ただの脅しだったのかもしれない。それまであんな彼を私は一度も見たことはなかった。だけどきっとあれが彼の本当の姿だったんだと思う。
もちろん私は出来ないと言った。すると彼が少しずつ私との距離を狭めてきた、、一歩一歩と、私はとっさに彼からナイフを奪おうとした。そのときだった、ナイフが彼の右の首をかすめたのは。
 あたりに真っ赤な鮮血が飛び散った。今でもまだその光景は鮮明に目に焼きついてる。手に ついた生ぬるい血の温度、壁にもたれた彼がつけた手形の血痕。
私はすぐに救急車を呼んだ。幸い彼の傷はかすり傷程度で済んだらしい。直るまでに2週間掛からなかった。だけど私が人をあやめてしまったのは事実。私を知っている誰もが結果だけを知り私にこう言った、振られた腹いせに男を切りつけたんだって、、。本当は違うのに、、。そんなんじゃなかったのに、、、。
新聞も週刊誌も、、。誰も知らない作り話を書き上げていた。
 勇がそっと私の頬を伝う涙を拭った。
その後、自己防衛と、相手の過失も見とめられて私は不起訴で法的には何の責任を問われることもなかった。
だけど、、とっても大きいものだった、私が受けた社会的影響は、、、。
 勇は黙って、私の手を握り締め続けてくれていた。
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