Impression~心の声
それでいい、それでよかった、、。
 言葉なんていらなかった。
 このまま、気の済むまで勇が隣にいてくれれば。
 夜の暗い闇が海を隠し、波打ち際さえも見えなかったけれど、海は静かに小波の音を立てていた。
「人生をやり直したい、、、。」
 それが私の本心からの訴えだった、、。
「僕が美鈴ちゃんの心の薬になれたらよかった、、、。」
 私の時間は止まった間違いなくその言葉で、、。
 私は勇に寄り添った。最後の悲しみをここで洗い流してしまいたかったから、、。
「どうしてもっと早くに私を見つけてくれなかったの?」
 私は勇のTシャツの袖を強く握った。
「僕もまだ、成長の途中だったからなんだと思う。」
 私達は揺られた、心地いい夜の風にだかれながら、、、。
 私は心のなかで勇の言った言葉を反芻した。
〝僕が美鈴ちゃんの心の薬になれたのなら、、、〟
 まぎれも無くその言葉は叶うことのない願いを秘めた言葉だった。断定も出来ず、宇宙をさ迷うほうき星と一緒だった。行き場のない言葉は寂しく一瞬でこの世から消えてなくなってしまいそうだった。
 私がその言葉を受け止めることができたら?
私達はその後、言葉を無くした。
 流れ星が私達の頭上をかすめた。
 私の願いはただ一つだった。
 隣で空を眺める勇も同じ星を見たのだろうか、、。
 勇の願いは?
 こうしている間にも世界は廻り続けていた。
「そろそろ、中に入ろうか?」
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