Impression~心の声
私は頷いた。勇はラジオを手に持って、アトリエの扉を開け、そして私を先に中へと通した。
　沖縄の夏は早かったけど夜風は少し冷え込んだ。だけどオレンジ色のランプの光に包まれた部屋に入った瞬間心も体も温かくなった気がした。光の色に温度があるなんておもえなかったし、実際部屋の温度は差ほど変わらないはずだったのに。不思議だったこの暖かさが。心なんて形のない物、きっと温度だってないはずなのに。だけどなぜか私の心の淵が少しずつ作られてゆくような、そんな感覚が芽生え始めていたのは確かだった。
　次の日も、その次の日も勇は作業を続けた。私も少し手伝いをした。危険じゃないことだけを勇は選び私にやらせてくれた。だけど私は楽しかった。この共同作業の全てが、、。
「いいこと考えちゃった。」
「いいことってどんなこと？」
　私は少しもったいぶらせて見せた。
「えぇっとね、、ここに小さなお店を開くの。そうしたらきっと勇君が好きなものを作れるようになると思うよ。いい考えでしょ？」
「それはいいねぇ。美鈴ちゃんがお店の看板娘になってくれるのかな？」
「もちろん。」
　私達は笑っただけどその会話の中には真実味という物が全く存在してはいなかった。
　うわべだけ？私は少し本気だった。そんな人生もありなのかなって勇と、この人生を、、。
　一度しかないこの人生でたった一人の愛せる人に出会えたとしたら、その愛するたった一人の人もためにこの人生をささげられたなら。きっとそれ以上の幸せは存在しないのではないか、何時しかそんなことを思い浮かべるようになっていた。まるで私の父と母のように。
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