Impression~心の声
手のひらの中を覗く私に勇が不思議そうに声をかけた。
「貝殻、、綺麗だったから拾っておいたの。」
 そう言って私は貝殻を勇に見せた。
「本当だ綺麗な貝殻だね、桜貝の仲間かな?」
 勇は一枚の貝殻をつまみ上げ窓の光にかざした。
「これちょっと借りてもいいかな?」
 勇は私にそういった。
「うん、よければ勇君にあげるよ。」
 ありがとうと勇はいって微笑んだ。
 ガラスたちは作る職人の心を映し出すと勇は言っていた。ここに飾られたガラスたちは全て勇の心なのだろうか。勇の心はこんなにも澄んで綺麗なのだろうか。もし私が同じ物を作り出そうとしたら、濁って醜い物が出来るのかもしれない。なんだか少し怖くなった。気付くと、勇と過ごせる時間はあと2日しか残されてはいなかった。
 勇が作業に戻ると、私はこっそりとあのアルバムを開いた。なんど見ても私はこの写真が好きだった。力強い希望と自信に満ちた瞳。私はその写真をこの瞳にやきつけた。目を閉じれば何時だってこの勇に会えるように、、。
神様、勇を元に戻してください。届かない思いは花からこぼれた香りのようにすぐにどこかへ散って言った。
 勇は今何を思って作業をしているのだろう、私のことをどう思っているのだろう。初めてそのことを考えた。知りたいと思った。だけどそんなことを聞けるはずは無かった。
 私は勇の作業が終わる夕方まで、浜辺を散歩したり、アトリエのガラスを眺めたり、ハンモックに座ったり、思うままに時を過ごした、少し元気の無くなった一輪差しのハイビスカスの水を変え、セミの鳴き声に静に耳を傾けた。まるで小学生の夏休みを満喫するかのように。太陽は必ず西に沈み今日も世界を赤で染め上げた。
「明後日だよね、美鈴ちゃんが東京に帰るのは。」
 夕食をとる最中に勇が私にそういった。
 私は頷いた。
「明日は仕事を休んで、一日中お話していようか?それともどこか言って見たいことはある?」
「仕事は平気?私のためだったら、迷惑をかけたくないから。」
 勇は大丈夫だと私に言った。
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