Impression~心の声
私はその箱をゆっくりと開けた。中には小さな紫色のガラスの花をあしらったネックレスが入っていた。
「綺麗、、。」
 思わす手に取るともう一つ、、。ネックレスの下に小さなガラスの小皿が入っていた。薄いピンク色をした小皿だった。手に取るとその中には私が拾った小さなピンク色の貝殻が閉じ込められていた。
「僕と美鈴ちゃんの思い出を閉じ込めた。僕たちの記憶から、僕たちが出会ったことが消えてしまわないように、、。」
 そのやさいい行動と言葉に胸が熱くなった、、。
「忘れないよ、、何時までも。」
 それが私の精一杯の言葉だった。
 私たちはまた夕日を眺めた。私にとっては沖縄で見る最後の夕日だった。日は昇りそしてまた沈み行く。それは繰り返し繰り返し地球が廻り続け時間が一秒も止まることなく進んでゆくことを私に証明し、そのことを実感させていた。止まる事のない時間の流れを、、。短い間だったけどそばにいてくれてありがとう、私は声に出さずそう心でつぶやいた。
 ベッドに付き目を閉じると、なかなか寝付くことが出来なかった。私はそっとベッドを抜け出した。そして一通りアトリエのガラスたちを見渡した、月の明かりにてらしだされたガラスたちを、、。
 テーブルの上には初めの日に勇に貰った青のガラスのトンボ球が無造作に置いたままになっていた。私はそれを手に取った。ここに置いておいたって、無くなることは決してない、何時だって私の手に届き見たいときに眺られる、私はそう思っていた。だけどもう、私は明日ここからいなくなる。
 ベッドに潜り込み何時しか眠りに落ちた。眠りに付くと夜が明けるのは早かった。窓から差し込む太陽の光で私は目を覚ました。
「おはよう。」
「おはよう。」
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