Impression~心の声
だけどそれを何故だなんて疑問に思うことはなかった・・・。
だって私はそれを知ってしまったのだから・・・。 
 その〝気まぐれ〟はいつだって長続きはしない。
代わりの人間なんて履いては捨てるほど存在する。もちろん私の代わりも存在した。降板。途中交代したところで誰も何も言いはしない。飽きたら捨てる、その言葉と一緒で何時だって私たちは乗り捨て自由なタクシーと一緒だった。
 だからあの事故の後だって、、。
 そう、、あれは事故だった、、。
 ただの事故だったのに、、。
 何を言っても解ってくれる人間など一人もいない。自分が一番良く知っていた。
 だから私は諦めていた。
出来るはずもないと何処かで決め付けていた。
 新しい人生の始まりなんて・・・。
 何度も繰り返したこの葛藤。
 相反する気持ちの方向の力が強すぎて、私は何度も引き裂かれそうになった。その選択はいつもどちらかに傾くことはなく、もつれて争いそのたびに私を困惑させた。
 〝葛藤〟
 葛や藤のつるがもつれることから、この言葉が生まれたという。いざこざ、争い、もつれ。よりどころのない私の胸中も、きっとこの二つのつるがもつれ合い、醜いものになっているのだろう・・・。
いつも私はおびえていた・・・。
 誰にも会いたいとおもわなかった・・・。
 だったらどんな仕事をすればいいの?
 生きてゆくため、やり直すことなんて出来やしないじゃない・・・。
あふれ出た涙を急いで拭おうと思ったけど、私はその場を離れ、自分の部屋に戻る事にした。
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