Impression~心の声
勇は今頃何をしているのだろう、、。
 寝返りを打って横を向いた。
 勇の声を聞きたかった、、。
 私は起き上がりドレッサーの鏡に映る自分を眺めた。
もしも一瞬で自分が自分でなくなってしまったら、、。いつも自分がいやだとか、、。この顔が邪魔だとか、、。簡単に私は言っていてけど。もしもそれが現実になって、全てを失ってしまったら、、。何度思い描いても今となっては図りがたい恐ろしさだった。
 勇はどれほどの痛みを抱えて生きているのだろう、、。
 私はそのまま椅子に座った。そこには勇に貰った宝物たちが置いてある。とても大切で、いとおしい宝物。
 私は貝殻の入った小皿を手にしようとした、その瞬間小皿を入れていた木箱を足元に落としてしまった。私は慌ててそれを拾いあげた。
 そしてその時私は気付いてしまった。その箱の底板の裏に手紙が入っていることに。
 それに気付いた瞬間、鼓動が抑えきれないほど高鳴るのを感じた。そして私はその薄い紙をそっと開いた。
《前略 美鈴さま
 本当に、会いにきてくれてありがとう。とても素敵で美しい君、例えどんなに短い時間でさえ一緒に過ごすことが出来たことを光栄に思っています。
正直言うと何度もいやになった、今の自分と自分の姿を。もう会えない君にに弱音を吐くのもおかしいけど、こんな僕のことを気持ち悪いとも言わずに僕のそばにいてくれた美鈴ちゃん、僕の話を誰よりも熱心に聴いてくれた美鈴ちゃん、誰よりもいとしいと感じたよ。もしも僕がこんな僕ではなかったら美鈴ちゃんを幸せにすることが出来たのかな?愛される資格を得ることができたのかな?二人で新しい光を探せたらって何度も思った。
僕はこの場では自分の気持ちを伝えられず君を明日見送ると思う。だけどどうしても伝えたい。本当の僕の気持ちを、僕は君のことが好きです。男としてもこの気持ちに確りとけじめをつけたいと思う。迷惑だけは欠けたくないから。僕の誰よりも好きな人、誰よりも
幸せになって下さい。  三上勇》
 私の手は無意識に震えていた。
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