Impression~心の声
タクシーが止まった。
「このあたりだと思いますが。」
 私は外を確かめると、そこには確かにあのアトリエがあった。
「はい、ここです。」
 運転手に礼をいい私はタクシーを後にした。
 たった一ヶ月ぶりの再来のはずなのに何年も前のことのように懐かしく感じた。そして何故だか緊張で手が震えていた。映画の撮影なんかよりずっと緊張した。今勇は何を思い何をしているのだろう。
 私は一歩一歩、歩み寄った。鼓動の高鳴りは近づくたびに高まった。
私は呼吸を整えてそっと入り口のドアを開けた。
 バーナーを使う音、すぐに解った。私はゆっくりと進み作業場の前に立った。開け放たれた扉の向こう側には勇の後姿があった。
「勇、、。」
 その瞬間勇は作業の手を止めた。
 勇はゆっくりと振り返った。
「美鈴ちゃん?」
 鳩が豆鉄砲をくらったかのように勇は驚いた、作り途中の作品を床に落としてしまった。
「落ちちゃったよ、、。」
 私が指を指すと勇は慌てて拾おうとしたけど、砂粒の付いてしまったガラス細工をもう一度使うことは出来なかった。
「ごめんね。」
 私は謝った。
「いいんだ、、、。でもどうしてここに?」
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