君の隣で、(オリジナル短編集)
振り向くと、ピンクのキラキラのネイルが目に入った。
その手元には僕のハンカチ。
「・・・これ、あなたの?」
おしとやかな声。
少し上を見上げると、にっこりと微笑んだ女の人。
前髪が長くて目元まではっきりは見えなかった。
「あっ、有り難うございます」
「ふふっ、よかった。」
彼女は笑顔を僕にもう一度見せた。
天使のような、きれいな笑顔を。
「えー、まもなく、————」
車掌が告げた。
「じゃあ、私はここでおりなきゃだから・・・」
彼女は颯爽と僕の目の前から姿を消した。
後ろ姿で分かったのは、
名門、沢島女学院附属高等学校の、生徒だってことぐらい。
彼女を見えなくなるまで目で追った。
人ごみにまぎれて見えなくなる直前に、
僕に「またね」と笑顔で囁いた気がした。
キラキラネイルのあの子。
(フォーリンラブ、ってこの事かな)
あの子は、もう二度と目にする事が、できない存在。
最初で最後の、一目惚れ。
FIN,,,