堕天使フィソロフィー
作業車の助手席に乗り込んで、
はじめての二人の空間に緊張しながら震える手でタバコに火をつけた。


『ルリ今日来ないって』
「そっか。どこ行く?」
『この前と同じでいいよ。』


日が長い7月。

以前入ったのと同じホテルに入って
ネタを打った。



「レイ、それどうしたの?」

『あ…切った』


彼氏の浮気や憂鬱さに耐えられず、
力いっぱい剃刀で
手首を切ったら
邪眼が産まれたようにぱっくりと傷口が開いていた。


シャワーを浴びて濡れてしまったガーゼを剥がす。


ベリッ。

「うわっ!」


うん。そりゃ退くよね。
でもタクヤはあたしの左手を包み込んでこう言った。


「今度切りたくなったら、俺の腕切りなさい。」

そんなこと言われたの
初めてて

無意識に
タクヤの胸に顔をうずめていた。

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