堕天使フィソロフィー
その後の記憶はあまりないけど、きっかけ橋のドンキでパリを2~3本買ってなだれ込むようにラブホテルに入った。

断片的に飲んだり、乾杯したり騒いだりした記憶はあるけどそこからは全然覚えていない。

気が付いたら朝で、ホテル供え置きの部屋着にショーツだけだった。
覚えてないけどSEXしたのか?と頭にクエスチョンマークを大量に浮かべながら隣を見ると、おそろいの服を着たシオンの背中があった。

昨日、一体どんな醜態を晒したかわからないから下手にその背中に腕を回せなかった。

二日酔い気味の胃を無視しながら、背を向けて二度寝すると今度はシオンの荒々しい声でたたき起こされた。

びっくりして彼の方に体を向けると、その声はあたしにではなく耳に当てられた携帯と言い争っていた。

何事だ?と思ってベッドから離れ、安っぽいソファに座ってタバコに火をつける。

そう言えば、昨日このタバコの臭いが嫌いだから変えてくれって言ってたっけ。
冷蔵庫のミネラルウォーターに手を伸ばしなら、シオンの言葉に耳を傾ける。

「だからお前は俺にどうしてほしいんやって?何なん?俺と喧嘩したいんやったら今から道頓堀来いや!」

関西弁の喧嘩口調はドスが効いてて怖いな、なんてぼんやりと考えながらシオンに現状を聞こうとメール画面で打って伝えようとソファの隅に目をやると無残にも綺麗に二つに割れたあたしの携帯があった。

酔ったノリで壊されたのか。塵々になった記憶が時系列を帯びてピースを合わせ始める。

あー。なんて事をしてくれたんだ、シオン。それを必死にでも制止しなかったあたしもあたしか。
後悔の混じった溜息をついてテーブルの上にあったお客様アンケート用紙の裏へとペンを走らせた。

『『記憶がない笑 どーした喧嘩?』』

「お前のかまってちゃんには付き合いきれんわ!ほんま!勝手にしろや!」

電話の向こうでは甲高い女らしき声が喚いていたけど、シオンは通話を切った。

『大丈夫?』

「レイちぇる起こしてごめんなー。なんかバ-の客が色かけてもいないのに勝手に好きだ付き合って今すぐ来てみたいなことほざいててなー」

『そうなんだ』

何それ他の女?とコンマ何秒で考えが浮かんだけど、その言葉は飲み込んだ。

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