堕天使フィソロフィー
6年生のある休日、母が海のある方へドライブへ誘った。
海辺には温泉があり、一緒に入った。

今までなるべくリストカットの傷を見せない様に、気を使ってきたけれど、温泉の一糸纏わぬ姿では隠しようがなかった。
食事中、箸を休めて母が聞いた。

「それ…自分で切ったの?」

『…うん』
「どうしてっ?」

私は本当の事が言えなかった。その時の母の瞳から零れる涙が怖くて仕方なかった。

『…友達いなくて』
「友達?いるじゃない。近所のトモミちゃんとか…あ、前に話してたミホちゃんとか、仲良くしてくれてるでしょう?」

『うん。だから大丈夫!』

母はそれ以上その時は追求しなかった気がする。
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