ベクトル→
「『ベクトル女』っていうのはね、椎のことなんだけど…」
「ちょっ、かすみちゃん!別に言わなくても…」
「いずれ知られるだろうしいいじゃない。」
えー、いやそうかもだけどー…。
引かれちゃうかもじゃんか…。
ん?なんで落ち込んでんの私!
引かれてしまえば、近寄って来ないじゃん!
もしかして、私、ほんとに…?
かすみちゃんの言った通りになっちゃったの?
そんな私の心の葛藤も知らず、かすみちゃんは話を進めていく。
「ベクトルって方向とか向きを持つ量のことをいうでしょ?」
一夜は無言で首を縦に振る。
舜くんは知っているので、興味なさそうにアイスコーヒーを飲みながら窓の外を見ている。
「椎の恋愛の仕方って、それみたいにその人一直線なの。周りなんか見ないで、大げさなアピールしたり、会ってすぐ告白したり。昨日も、ね?」
急に私に話を振られ、びっくりして飲んでいたアップルジュースをむせかえしそうになった。
「昨日も会って…っていうか、向こうは椎のこと知らなくて、椎が駅で偶然見て勝手に好きになっただけなんだけどね。3日もしないうちに昨日いきなり告白して見事に玉砕ってワケ。」
自分のことなだけに、笑えない…。
早くこの話題終わらないかな…。
しかし、そんな私の思いとは裏腹に、一夜はかすみちゃんの話を真剣に聞いている。
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