幼馴染みの夢
笑顔の向こう
「おい、あれ持ってねぇ?」


「持ってねぇです。」


風呂上がりでバスタオルを頭に巻いた愛が、窓を見た。

了解も得ずにさっさと部屋に入り、本棚をあさる。


「あるじゃん。借りる。」


英語辞典をペラペラと捲った。


「辞書くらいあるでしょ?」


「ありますよ。学校に。」


「何それ?」


「あぁ、部屋にもあるかも。」


「意味分かんない。そういや今日、早かったの?ゲーム、ちゃんと片付けといてよね。」


「お前のじゃねぇじゃん。」


「じゃ、持って帰んなよ。私、やらないし。」


「いいじゃん。」


実はこのゲーム。俺のもの。

俺の部屋にあったゲーム。

対戦ゲームをするのに、こっちに持ち込んだまま。

もう、二年。

自分の部屋になくても不自由しないから、そのまま。

こっちでやれば良いだけのはなし。


「なぁ、遅かったじゃん?部活?」


「うん。」


「どうなの?」


「ちょっと、ベッドに寝ない!」


「ミニスカとかはいてんの?」


「はくわけないじゃん。部活だよ?」


ベッドに寝転んだ俺を見ながら、ソファに沈んだ。


「なんだ。残念。見に行こうかと思ったのに。」


「学校、どう?」


「あ?どう?どうもしねぇ。楽勝。」


「濂ちゃん、頭だけは良いもんね。」


「それに加えて顔も性格も良いからな。」


「ばぁか。」


バスタオルで髪を拭きながら笑う。




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