幼馴染みの夢
「起きろ!」


布団に潜り、まだ、熟睡中の愛。

どんな夢を見ているのか、幸せそうに笑っている。

目が覚めたら、現実が始まる。

毎日、どんな顔で、どんな気持ちで過ごしていたのか。

みんなに隠し続けて。

一人で頑張って。

いじめはどこまで進んでいるんだろう。

俺は、何をしてやれるんだろう。

本当のところ、頭の中はかなり混乱していた。

眠れなかった。

だから、今、目の前で眠っている愛をみて、正直ほっとした。

大きく深呼吸し、耳の側で呟いた。


「起きろ、ばぁか。」


びくともしない。


「起きろぉ!」


「…………え…?」


寝惚け眼で起き上がる。


「………濂ちゃん?」


「よ。起きたか?」


「おやすみ。」


また、布団に潜る。


「教科書、ここに置くぞ?」


「…………ん。」


「名前書いてねぇから。お前の名前、書きな。」


「…………ん。」


小さく返事だけが届く。


「じゃあな。」













ドアを開けた背中に、小さな感謝が届いた。











「ありがと。」











「おぉ。」










返事だけ返し、そのまま廊下に出た。

愛の顔をみる勇気が無かった。





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