幼馴染みの夢
俺の最後の闘いの場所。


「松田先生?」


「おぉ、和泉か。入るか?」


「良いっすか?」


俺の元担任が、愛の担任。


「お客だぞ!女子、喜べ〜!」


この担任。芸能活動を応援してくれていた。

学校にもずいぶんかけあってくれた。

結局、転校という形になってしまったけれど、感謝している。


「お邪魔しま〜す!」


「こんにちは。」


凛と並んで教室に入る。

学生達から、黄色い声が上がる。

ただ一人、を除いて。


「松の授業?こいつの分かんねぇんだよなぁ。」


冗談を良いながら、先生と、学生達と、一緒にカメラに収まった。

もちろん、ただ一人、を除いて。

そして、その一人を見ながら、くすくす笑う女子三人。

さりげなく、その三人に近寄り、呟いた。


「いつも応援ありがとうね。」


とびきりのアイドルスマイルで。


「あ、はいっ。ドラマ、観てます。頑張ってください。」


「ありがとう。」


順番に握手をする。


「それから…教科書は大切に使わなきゃね。」


「え?」


「ハサミもね。」


できるだけ接近し再びアイドルスマイルで迫ってみる。


「次は……君たちの髪の番かな?坊主似合いそうだよねぇ。」


三人とも、真顔に。

最後にとどめ。


「良いこだ。次は……無いから。ね。」


頭を撫でなで。


「じゃあね。」


これでもか攻撃。

ウィンクを一発。

周りが一気に黄色い叫び声。

窓際に立ち、じっと見つめる姿を視界の片隅に納めながら、凛と共に、美しく去る。





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