幼馴染みの夢
母校訪問から一週間。

たまたまドラマの収録が深夜になり、朝方帰り、そのまま学校、という日が続いた。

愛の事、気にしながら、気にしてない振りをした。


「濂!ご飯!」


「いらね。」


「これ、持っていきなさい。」


「はいはい。行ってきます。」


お袋に渡されたちっこい袋をバッグに放り込み、玄関を出た。


「濂ちゃん。」


愛が、立っていた。


「おっす。」


「今から学校?」


「キャバクラにでも行くように見える?」


「相変わらず馬鹿だ。」


「なんだよ?電車乗り遅れそうなんだけど。」


「途中まで、良い?」


「ほい。出発。」


歩きながら、何を言い出すのかドキドキした。

取り返しのつかないことになってたら………。


「こないだ、ありがとう。」


「ん?何が?わっ、おにぎり落ちるっと。」


「もう、大丈夫だから。」


「何が大丈夫だって?」


「あのウィンク、凄かったね。」


「そうか?さすがだろ?」


「うん。尊敬した。」


「どうした?熱でもあんじゃね?」


「やって?」


「は?」


「私にもやって?」


「馬鹿じゃねぇの?」


「だって、凄い効き目だったよ?」


「そんなに効いた?」


「うん。効いたよ。」


「おにぎり、食う?」


「どうして分かったの?」


「どうして?」


マジな瞳で俺を見ていた。


「どうして?」


立ち止まった愛。

前を向いたまま、ゆっくり歩く俺。


「俺をだれだと思ってんの?お前を泣かすやつは俺が絶対ぶっとばす。」


拳を空に向かって突き上げた。


「………ばぁか。」


「どうせ馬鹿ですから。ほら、早くしねぇと遅刻すっぞ?」


振り返ると、涙をいっぱいにためた瞳が俺を真っ直ぐに見上げた。






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