幼馴染みの夢

平日の昼間。


「仕事あるから早退してきたらさ、おばさんに逢って、馬鹿が風邪ひいたって言うから見にきた。」


そう言って、散々馬鹿にして帰って行った。

誰のせいでこんなことになったと思ってんのよ。

あんたのせいでしょうが。

部活が終わったのが遅くて、ドラマに間に合いそうになかったから、だから、走った。

雨の中、一時間。

丁度良いバスがなかったから。

録画のタイマー予約はしてるけど、やっぱりちゃんとその時間に観たいから。

頑張る君を観たいから。

だから、走ったんだから。

お礼こそ言われても、馬鹿にされる覚えはない。

母さんと並んで観ながら、だんだん遠くなる幼馴染みを観ていた。

回数を重ねるたびに思う。

芸能人になってきた。

テレビで良く観るようになった。

見たことない笑顔で笑う。

聞いたことのない優しい声で話す。

知らない人みたいにテレビから私をみてる。

ずいぶんと、遠い人になったもんだ。

気軽に、話しかけられないよ。

素直に笑えないよ。

知ってる?

私、ずっと、君しか見てないんだよ?

知らないでしょ?

知らなくても良いけどさ。

これ以上、遠くに行ったら、そしたら私も知らなかったことにするよ。

その方が………良いのかな……。






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