幼馴染みの夢
そんな俺の勝手な言葉が、愛から笑顔を奪った。
そして、それに気づかないまま、どんどん愛を傷付けていった。
自分を偽るのに必死だった。
「なぁに緊張してんの?馬鹿みたい。」
愛なら、笑い飛ばしてくれたのかな。
でも、それに気付いた時、愛は泣き疲れて、もう、笑っていたんだ。
哀しい笑顔しか残っていなかった。
「ドキドキする。愛ちゃんは?」
「おばさん、息子に会うだけじゃん。」
「だって、コンサートなんて初めてだから。愛ちゃん、内輪買った方が良いかな?」
興奮するおばさんの隣で、居心地の悪さと、期待が混ざり、複雑な気持ちで座っていた。
「パパ、行けなくなったの。お願い。愛ちゃん一緒に行って?」
今日は土曜日。
なんとか合格した女子大の入学式を待つだけの優雅な朝。
お腹がすくまで寝ていよう。
そう決めていたら、母さんに叩き起こされた。
春休みで毎日ごろごろ寝てる身とすれば、断る理由が出てこない。
仕方なく、準備を始める私。
でも、鏡の中、念入りにチェックをする自分。
知らなかったことにしていたコンサート。
嬉しくて、自然と笑顔になった。
「内輪、買ってこようか?」
「ううん。恥ずかしいからやっぱりやめる。あのこ、間違えたりしないかしらね?」
おばさんが可愛くて素直に笑った。
でも、濂ちゃんは、私がここにいることを望んでいないのかもしれない。
一瞬だけ、そんな思いが頭をよぎった。