幼馴染みの夢
「あ、ほら、始まる。どうしよう。愛ちゃん。」


お互い、別の意味で戸惑いながらも、興奮する私達。

周りにつられて立ち上がった。







キラキラしたアイドルがいた。







どこにも幼馴染みはいなかった。








「楽屋、寄る?」

「楽屋?ううん。おばさん、行ってらっしゃい。待ってる。」

「良いから良いから。」


手を引っ張られ、心のどこかで喜んでいた。










「わざわざ来んなよ。」


通された部屋。

楽屋の近くなんだろう。

まだ衣装のままで汗だくの濂ちゃんが目の前にいた。

良かったって誉める母親に、照れてぶっきらぼうに答える息子。

少し離れて見ていた。


「愛ちゃんね、女子大生なのよね。」


突然振られて、びっくりして顔をあげた。


「え、えぇ。まぁ。」

「女子大生?」


濂ちゃんが、初めて私の存在に気付いたみたいに呟いた。


「へぇ、ちゃらちゃら遊んで優雅なこった。」

「………。」

「どうせ、やりたいことわかんないからとりあえず大学行っとくかってやつだろ?相変わらず適当なんだな。」

「こら、濂。」

「ま、俺には関係ねぇけど。興味もねぇしな。ちゃらちゃら頑張んな。」










「そうだね。ちゃらちゃら頑張るよ。ま、関係ないか。あ、おばさん、私、先に行くね。濂ちゃんとゆっくり話して。お邪魔しました。」









笑って、濂ちゃんを見ないように部屋を出た。

背中で名前を呼ばれた気がしたけれど、恐くて立ち止まる勇気はなかった。






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