幼馴染みの夢


数日後。

ちゃらちゃらした女子大生活が始まった。

適当に友達も出来て、テニスのサークルにも入った。

笑って楽しく過ごした。

ポニーテールをやめた。

伸ばしてパーマをかけた。

化粧もした。

ファミレスでバイトも始めた。

家に帰ると、毎日ぐったりした。

ちっとも楽しくなんかなかった。

でも、朝になればまた始まる。

たったの二ヶ月で疲れ果てた。


「お前、意外と意地っ張りだな。」


馬鹿兄貴の誠が言う。


「何しに大学行ってんだ?」

「青春を謳歌しに。」

「なるほどね。」

「もう行かない。」

「は?」

「行きたくない。」


テーブルに突っ伏す私を哀れな表情でみていた。


「早くねぇか?どうせやるならもっととことんやりゃあ良いじゃん。」

「やりたくない。」

「困った妹さんだ。」

「ほんと困った妹さんだよ。」

「ばぁか。」

「ほんとばぁか。」

「……………」

「…………助けて。」

「………愛。」

「なんちゃってね。」


うーんと背伸びしてみる。


「助けてやろっか?」

「え?」

「ネズミの国、行くか?」

「良いの?」

「助けて欲しいんだろ?」

「行く!」


単純すぎ?

でも、嬉しかった。

大好きだった。

夢の国、ディズニーランド。

嫌なこと全部無くなる気がするから。


「早く行こ!」

「はいはい。」


この男。

実は、妹を溺愛している。

はず。



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