幼馴染みの夢
高校時代にバンドを組んでいたまこ兄。
かなり注目されていた。
スカウトもされてたみたいだけど、なんの迷いもなく、東大へ。
メンバー全員が国立大学だった。
そのバンドの曲を作ってたのがこの人。
俺のソロの曲を作って欲しくてずっと頼んでる。
なかなか良い返事をくれないばかりか、愛に謝れ?
あの日。
偶然にみせかけて出会ったディズニーランド。
微妙な空気にしたのは、確に俺。
ぽろっと言ってしまったばっかりに、付録がついた。
俺だって悪いと思ってる。
愛が誤解してるのはよくわかった。
でも、時間が無かった。
コンサート前の年末に出すアルバムに入れたい。
今月中にOKを貰わないと、用意された曲の中から選ぶことになる。
絶対、まこ兄の曲を歌いたかった。
あの日、ついでに約束も取り付けようと思っていた。
軽い気持ちで……冗談のつもりで言ったんだ。
「あれ、何?俺への嫌がらせ?」
「あったりー。よくわかったねー。」
そう言って、笑って、ふざけて………。
そのはずだったのに……。
愛は、笑わなかった。
わざときついこと言って、そして、泣いた。
俺は、泣いて笑う愛に、何も言えなかった。
それどころか、愛と向き合わなかった今までの自分の愚かさに、驚愕していた。
俺と愛の空白を見付けてしまい、心が震えていた。
忘れていた。
愛は、脆い心に必死に蓋をするのを。