幼馴染みの夢
「それ、読んどけ。」


テーブルにおかれた雑誌を指差した。


「俺、明日朝早くて、寮戻んなきゃなんないから行くな。」


立ち上がり、窓を開けた。


「もう帰るの?」


立ち上がったら、目の前がゆらりと揺れた。


「ちょっ………大丈夫か?」


後ろから肩を抱いて支えてくれる。


「ごめ………。」


足に力が入らなくて、座り込んでしまった。


「バイトしまくってんだって?無理してんだろ?」

「大丈夫。ごめん。ありがと。」


ゆっくり立ち上がり、濂ちゃんを振り返った。

思っていたより近くて、ドキッとした。


「寝ろ。」

「…うん。」


私を見下ろしながら、ちょっと考えて、小さな溜め息をついた。


「ホントに手のかかるやつだな。ほら、掴まれ。」


私の腕が濂ちゃんの首にかかったと思った瞬間、体がふわりと浮いた。


「………っ!」


びっくりして、慌ててしがみついた。


「今時流行んないんだって。働きすぎて倒れるなんてな。ドラマの見すぎ。」


ぶつぶつ言いながら、私をベッドに下ろした。


「帰れねぇだろが。」


自分もベッドに腰を下ろし、足元に置いてあったタオルケットを私にかけてくれた。


「………ごめん。」

「謝んな。」

「………ごめん。」


はぁ…………と溜め息をついて頭をかきむしる濂ちゃん。

私は私で、わけがわからずぼんやりしたまんま。

雑誌、読んどけって言ってたな。

何書いてあんだろ。

濂ちゃんが載ってる雑誌は見ないようにしてるのにな。

瞼が重くなってきたよ。

久しぶりに逢ったのに……

なんか…………

笑って……………ない……





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