This is us
Side Satori
髪を優しくさらっていく風が気持ち良かった。
金木犀の甘い香りに、頬を緩ませながら。
文化祭の準備で、近くの文房具店に買い出しに行くところだった。
なっちゃんと優花と三人並んで歩く。
さっきから無言なのは、コンビニで買ったアイスをそれぞれに頬張っているからだ。
もう十月か…。
見上げた空にはすじ雲が広がっていて、秋めいてきた空気を胸いっぱいに吸い込む。
結城くんとは話す機会もなく、時々どこかで女の子に囲まれている姿を見かけるだけだった。
遠い彼の存在に、胸がちくりと痛むけれど。
私なんかが相手にされることなんて、もうないんだって…
そう言い聞かせていた。
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