This is us



「そうだったんだ?あたし達一緒に帰るからさ。じゃあ準備頑張ってね!」


「うん、バイバイ」


結城くんはしれっとした態度のまま、先を歩いていく。


私に手を振った後、なつめちゃんは彼を追いかけていった。


二人並ぶと、絵になる。


私は唇を噛み締めて、鼻の奥が痛くなる事を拒んだ。

じわじわと広がるのは、鳴り止まない痛みと赤みかかった空。


涙を必死で飲み込んで、“ほら…ね”と呟いた。


だから、早く忘れろ。

叶うハズ、ないんだから…


諦めろ。


お願いだから、記憶を消して下さい。

私の中に埋め込まれた彼との記憶を…


消して下さい…


そう願えば願う程に、色鮮やかに蘇る夏祭りや中庭での彼。


ダメだ…


涙が滲んで、視界が霞む。


そんな私を包む金木犀の優しい香りに、涙がそっと頬を滑って行った。



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