This is us




「れーんー!」


教室の入口に、なつめが立っている。


「あ、原さんじゃん」



佐々木が嬉しそうに手を振り返した。



「傘忘れた〜」


それは、つまり一緒に帰ろうって事。


「突然降ってきたもんね?」


佐々木が窓の外を眺めながら、降り止みそうにない空に溜息を吐いた。



「俺が傘なんて持ってると思う?」


「え、また盗まれたの?」


傘なんて、毎回パクられている。

こないだはジャージが無くなっていたし。


女子達のストーカーじみた行為は、未だなくならない。



「そういう事」


「ちっ。あ、今日夕飯食べ行くからよろしく〜」



あっさり手を振りながら教室を出ていくなつめを、ポカンとしたまま佐々木が見つめていた。



「原さんて…可愛いな…」


「は?」


思いっ切り眉を潜める俺に、佐々木がニヤニヤと頬を緩ませる。



「ほら、恋に落ちる秋ってよく言うじゃん?」


「………」



「ねぇ〜蓮ちゃ〜ん!」



無視。

もういちいち付き合ってられねぇ…。


適当に佐々木をかわして、下駄箱へ向かう。

.
< 173 / 388 >

この作品をシェア

pagetop