This is us
「…アホ」
「あっアホ?」
「お前って、どうしようもないアホ」
瞳を細めて、そう言う彼。
私はポカンとしたまま、赤面する。
「…でもよかった」
「よかったって…?」
「嫌われたかと思ったから」
いちいち私の心臓は、ドキドキと速くなって。
彼の事が好きなんだって、改めて実感する。
「結城くん…」
さっきまでの不安や恐怖が嘘みたいに。
「もう一回聞きたい」
すごく幸せ…。
「……」
後頭部を掻きながら俯く彼を見て、私はにやけそうになるのを唇を噛み締めて堪えた。
「…好き」
耳元で小さく囁かれたその声も、恥ずかしそうに視線を逸らす仕草も。
全部全部、愛おしい。
「…ふふ。最高」
何もかもが、キラキラと輝いて見えた。
相変わらず、雨は降り続いているけれど。
傘の中だけ、時間が止まったように温かくて優しかった。
あの夏、雨が降らなければ
君との距離は縮まらないままだった。
あの夏、雨が降らなければ
君に恋をすることもなかった。
雨はいつも、二人の距離を縮めてくれる…―
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