This is us




「ねぇ、あそこに座ってるのって…」


「かな?でも違うんじゃない?」


「えーっ、だって雰囲気似てない?」


どこからか聞こえてくる女の子達の話し声に、私ははっとした。



「下向いてるから顔分からないよね」


「うんうん。こっち向かないかな?」



結城くんの事を言っているんだと、すぐに気付く。


そっか…


結城くんは、学校内だけじゃなく近隣の高校生達にも名が知れている。



その隣に私がいるから、堂々と出来ないんだ…。


そう思うと次から次へと、マイナスな言葉が浮かんできて。


一気に暗い気持ちになった。


わざわざ映画見に行くのに、地元から電車で一時間もかかるデパートへ行くのは…


きっと、少しでも私達の関係がバレないようにって事なんだよね。



考え事をしていると、電車はあっという間に降りる駅へと着いた。


無言で席を立つ。


ねえ、結城くんは私のどこを好きになったの…?


香川さんやなつめちゃんみたいに、きらびやかでもない。


ただの馬鹿でアホな、こんな私の…。


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