This is us



「ぐすっ…」



「大丈夫か?」



映画を見終わった後、未だに鼻水を啜る小田切。


思っていたよりも良かった。


ラストはよく意味が分からなかったけれど、涙を誘う展開に俺も鼻の奥が痛くなった。



「良かったねぇ〜」


「お前泣きすぎ」


「だって、ミィがさ…」



なんだかその姿が小さな子供みたいで、彼女の頭をポンポンと撫でる。



「良かったな」



腕時計で時間を確認すると、もうすぐ17時になる所だ。

もうこんな時間か。



小田切がメイクを直してくると、トイレへ入っていった。


壁に寄り掛かって、携帯を弄ぶ。


「お兄さん一人?」



一人でこんな場所にいるかよ。

聞こえてきた甘い声に、無視を試みる。



「ね、これからあたしと遊びません?」


「………」



小田切、早く帰ってこい。


「んもう、信じらんな〜い」



諦めたのか、ヒールの音が遠去かっていった。


少し離れた所で、女達の笑い声がして。


あの女の仲間が見ていたんだと知る。



気分悪りぃ。


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