This is us
「…こんなに」
じりっと砂利と靴が擦れる音がして、距離が縮まる。
「テカテカしたのつけたら…」
彼の冷たい指が、唇に触れた。
その刹那、電流が走ったように全身が震える。
「口塞げねぇよ…」
彼が親指で、そっとグロスを拭っていく。
張り裂けそうに、胸が高鳴る。
私はどこかで間違えていたのか、いや、もう何も考えられなくて。
涙がつつっと頬を滑り落ちて行った。
「黒くなるだろ…」
マスカラで染まった涙は、真っ黒。
今程、雨が降ればいいのにって願ったことはない。
雨で、全部洗い流して欲しい。
自分の弱さや、愚かさを…
一番醜いのは、自分の“心”だったんだ…――
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