This is us
「…ごめんなさい」
頬を打つ風が、刺さるように冷たい。
「いや…俺も悪かった。暫く一緒に帰れなくて」
「うん…嫌われたかなってずっと考えてた…」
ハンドタオルで涙を拭いながら、そう言葉を落とした。
彼はハッと私を見た後、すぐに視線を外して。
「…んなわけねぇだろ」
と、ボソボソと呟いた。
「でも…」
言っちゃおうか…
言わないでいようか…
迷っていると、彼は急かすように私を見た。
「やっぱり、急に会えないって言われたら不安になるよ…」
冷たくなった手をギュッと握りしめる。
面倒くさい女だなんて思われたくない…
そんな私の手を、更に冷たい手がそっと触れて。
心臓を掴まれたかのように、胸が苦しくなった。
「…悪かった」
包まれた手が、不思議と温かくなっていく。
また泣いてしまいそうで、私は黙って左右に首を動かした。
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