This is us
「私だけ留年したらどうする?」
「べ、別にどうもしねぇよ」
「えぇー…結城くん冷たし」
なんだか俺だけ一人動揺してるのが、情けない。
彼女の隣に座っているのに、遠く感じる。
もっと近付きたい。
もっと…
いや、今日はこの馬鹿をどうにかしなければいけない。一緒に卒業できなかったらマジで笑えないし。
「三年生は一緒のクラスになれたらいいね!」
「そうだな。…て、落書きすんな。コレ俺の教科書!」
「あ、そうだった!はは、キティちゃん描いちゃった」
無邪気に笑う小田切に、俺もつられて笑顔になる。本当に、どうしようもなく可愛いと思ってしまう。
「じゃあさ…」
彼女の肩を抱き寄せて、耳元で囁く。
「問題解けたらキスしてやるよ」
「えっ…きききキス?!」
案の定、小田切は耳まで真っ赤にして俺を見上げた。
くりっとした瞳がゆるゆると動揺しているけれど、それを至近距離で見ている俺まで顔が熱くなる。
自分で言ったくせに、何やってんだか。
「ほら、問い三からやってみろよ」
「はっはい」
彼女は再びシャーペンを握り、教科書に向かった。
長い睫毛が影を落として、真剣な眼差しで問題を何度も読んでいる。
俺はそれを静かに見守った。
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