This is us


「れーん。一緒に帰ろ?」

放課後、バッグを持って教室を出ようとしたらドアを塞がれた。


俺は一回じろりとそいつを睨むと、踵を返して反対側のドアへ向かう。


「あーっ逃げんな!」



甲高い声がキンキン響いたと同時に、腕を掴まれた。


「離せよ」


「やだ」


不自然なくらい明るいミルクティー色の髪。

幼さが滲む顔に、似合わない濃いメイク。


こいつは俺の幼なじみの原 なつめ。


何かと俺の後をちょこまか動き回って歩く、手強いやつで。


俺に構っているせいで、女から何度も痛い目に遇っているっていうのに、本当に懲りない奴。



「また殴られんぞ」


「別に。殴られる意味が分からないもの。蓮と仲良くしたいならあたしを殴らないで堂々と近付けばいいのに」


そう言って教室の隅でかたまってなつめを睨む女達を、チラッと見る。


お前面倒臭い喧嘩をよく自分からふっかけるよな。



「悪いけど喧嘩に巻き込まれるのは勘弁。俺、帰るから」


するりと緩んだ手から逃れて、教室を出た。


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