This is us


「結城くん!」

週末。水族館へ行きたいと彼女からの要望に応えて駅で待ち合わせた。

相変わらず遅刻するのは、少し腹ただしいけれど。

「おう」

さとりの嬉しそうに笑う顔を見たら、気持ちが一気に高鳴った。

「ごめんね…遅れちゃって」

「想定内だから気にしねぇよ」

白いファーが付いたコートがよく似合うと思う。けれど、照れ臭くて言葉を飲み込んでしまう。

きっと佐々木だったら躊躇いもなく"可愛い"だとか口にするんだろうな。

電車に乗って一時間。
窓からの景色は、遠くの山までよく見えて。
青い空が覆うように綺麗に澄み渡っていた。

「空いててよかったね」

休日の朝の車両にはほとんど人は乗っていなくて、隣に座っている彼女はそう言って俺に笑いかける。

「あぁ」

いちいちドキドキしてしまう自分が恥ずかしい。小さく欠伸をくりかえす彼女の肩を引き寄せて。

「寝てろよ」

「ふふ、ありがと…」

彼女は俺の肩に頬を寄せて、瞳を閉じた。



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