This is us



二月に入り、今年何回目かの雪が降った。
昨日の夜から降りだした雨が、深夜に雪に変わり今日一日はどうやら雪らしい。

外は一面真っ白で、眩しいくらいだ。

中間テストを来週に控えている為、今日は彼女の家で勉強会。

さとりの目標は、"赤点をとらないこと"らしい。とても四月から受験生になる人の目標ではないけれど。

留年させるわけにはいかない。

さとりのマンションへと雪の道を歩きながら、教科書がぎっしり入ったバッグを肩にかけ直した。

「結城くん!寒いね。雪の中ありがとう」

「いや、大丈夫」

エントランスでビニール傘についた雪をはらう。

さらさらとした雪は床に落ちると水滴に変わっていった。

「今日はね…お母さんがいるんだけど…」

「緊張するな」

いつもの癖で、髪をワックスで整えてきてしまった。チャラチャラしたイメージを与えてしまわないか、不安だ。

「大丈夫。勉強教えてもらうって言ってあるし」

エレベーターはあっという間に八階に着いてしまう。

「いや、なんかそれフォローになってない気がする…」

「お金払わなくていいのかしらーって、家庭教師扱いだよ」

あぁ、そうだ。さとりのお母さんもきっと…いや多分そんな感じなのだろう。

彼女を越える大物の予感がする。


「初めまして、結城 蓮です。お邪魔します」

「初めまして、小田切の母です。さとりがお世話になってますー」


さとりに連れられてリビングに顔を出すと、小柄な彼女の母親が笑顔で迎えてくれた。


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