This is us
「じゃあ、数学で半分以上は点とるからな」
「はい」
隣のクラスだから担当の数学教師が一緒なのはありがたいことだ。
テスト範囲さえしっかりおさえればなんとかなる。
「結城くんは、数学何点だった…?」
「九十二点だった」
文系に進んでおきながら、数学は好きだったりして。
「え、本当に?すごい…」
「さとりだって、ちゃんと勉強すればとれなくない点数だ」
しかし、俺の説明が悪いのか彼女の理解力が相当低いのか。さっきから同じ説明を何度も言い回しを変えては、繰り返す。
「ひぇー…」
「ひぇーじゃねぇよ。あー、へのへのもへじ書くな!何回も言うけど、俺の教科書だからな」
駄目だ。彼女のペースに持っていかれる。
「つい癖で…」
消ゴムで消すさとりは、へらへらと笑っていて。真剣に教えているこっちがバカらしくなってくる。
「はぁ…じゃあ、少し休憩しよう」
「やった」
シャーペンを置いて、俺はベッドに寄りかかった。
「あれから変わったことはないか?」
「ん?」
香川に呼び出されて云々から、暫く経ったけれど。あれから噂も、女達に騒がれることも嘘のように無くなった。
「香川に何もされてないかって」
「…うん、大丈夫だよ。あの次の日から、嫌がらせも噂も無くなったって、もうそれ聞くの五回目くらいだよ」
"大丈夫、大丈夫"と笑う彼女に、ほっとする。
何回目だとか、そういう事はよく覚えてやがる。
「本当にありがとう。まあ、時々睨まれたりすることはあるけど気にしてないよ」
「おう」
ぐっと伸びをした所で、部屋のドアがノックされた。
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