This is us
「難しかった!でもお菓子作るの好きなんだ」
そう話す彼女の瞳はキラキラと光っていて、自然と自分も頬が緩んだ。
「食っちゃうの勿体ないな」
「いつでも作るよ」
さとりの笑顔は、本当に俺の心をギュッと鷲掴みにする。優しさと温かさで溢れている。
「いただきます」
一口、マカロンを口に入れた。
ほんのりと香るビターチョコレートと、やわらかいクリームの味。
「ん、うまい。今まで食った中で一番うまい」
「ほ、ほ本当?!」
「あぁ」
ふわふわと消えていく甘さは、何だか雪に似ていて。
彼女をそっと抱き締める。
触れても、君は消えないで欲しい。
ずっと、俺の中で。
何故かそう心が感じたのは、未来の自分を何か案じていたのかもしれない…
キスをしようと顔を傾けた時、
「紅茶のお代わりはいかが?」
ノックなしで、ドアが開いたもんだから俺達は慌てて離れた。
「お母さん、まだ飲んでないから」
「あらやだ。フライングウェイしちゃった」
苦笑いで戻っていくおばさんに、はーっと深い溜息がもれる。
てか、フライングウェイって何だ?
俺とさとりは顔を見合わせて、ふっと笑い出した。
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