This is us
「なんでよ〜?」
なつめが不服そうに眉を歪めて俺の顔を覗けば、風に乗ってふわっと甘い香水の匂いが鼻を刺激した。
「行きたくないから行かねぇの」
「理由になってない!」
そもそも人込みなんて嫌いだし、俺がその中に行けばどうなるのかなんて想像つく。
「知ってるだろ?そういう類のもの、大嫌いだって」
「う…知ってるけどぉ!」
煮え切らない様子のなつめは、ぐちぐち言うのを辞めない。
俺は聞こえないフリをしてそのまま家へと入って行った。
学校から家までは徒歩15分と、かなり通いやすい場所にある。
俺が逃げるように家へ入ると、さすがに諦めたようで。
すぐ隣からは、玄関を荒ただしく踏み付ける音が聞こえた。
近所迷惑だろ、あれ。
その後も、階段をどしどし上がって部屋のドアがバタンっと物凄い音を立てて閉まったのが聞こえた。
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