This is us
「あっ…」
手からボールが落ちて、コロコロと転がっていく。
「小田切、気を抜かない」
すかさず先生から怒鳴り声が飛んできて。
「すみません。もう一度お願いします」
汗がこめかみから頬へと流れていった。
ボールは手の平に乗せていなければいけない。少しでも指先に力が入って掴んでしまえば減点になる。
「1、2、3、4…」
連形がなかなか成功しない。
手具交換も全員で揃って受け取れない。
一つ一つの動作が中途半端なまま、曲に合わせて次から次へとマット内を移動する。
「ストップ」
それは団体メンバー皆が分かっている事だ。
分かっているのに、手具操作で手間取って集中出来ない。
先生は曲を止めて、集合をかけた。
「体育館使える日が限られているのに何でもたもたダラダラやってんだよ!バスケもバレーも皆大会前でも練習してんだ。やる気がないなら校外走ってこい」
厳しい言葉に、誰も何も言えない。
やる気がないなんて、微塵もないんだ。
「あと一回通しでやったら、もう今日は練習終わり」
「はい」
五人で気合いを入れ直して、再びマットに上がった。
「曲入ります」
私達は、入賞どころか上位に入るなんて出来ないことは分かっている。だからと言って諦めているわけではない。
ライバル校よりもいい結果を出したいし、自分達の中で最高の演技をしたい。
だから毎日練習を重ねて、朝も昼も時間を作れるだけ作って励んでいた。
皆悔しいに違いない。
どうしてこんなにうまくいかないのか、思うように動けないのか。
頭と体が追いついていかなかった…
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