This is us


「そんな驚かなくてもいいだろ」

「ご、ごめん。待っててくれたんだね…ありがとう」

寒い寒い日に、暖かい缶コーヒーを差し出されたような、優しい幸せ。


「ちょっと見てた」

「えっ?!すごく恥ずかしいんだけど…」

「カッコいいじゃん」

今日の練習はいつも以上に厳しかった。彼もきっと気付いているのに、褒められた事がすごく嬉しくて。

「ありがとう」

好きな人に認めてもらえただけで、全てがうまくいくような気がする。

その位、私を強くしてくれた。

「でもかなり待ったでしょ?」

「いや、図書室で本読んでた。読みたかった本がやっとあってさ」

「へぇーえ。頭良い人はやっぱ違うなあ」

でも、彼が読む本なら私も読んでみたいと思う。

「さとりも少しは読んだ方がいいかもな」

「やっぱり?どんな内容なの?」

「恋愛小説。まだ途中だけど、くっつきそうでなかなかくっつかいんだよな」

そう話す結城くんの新しい一面。
本の話をしている時、すごく楽しそうで。
思わずその横顔に見とれてしまう。

「結城くんもそういうの、読むんだね」

「あまり読まないけど、その本は好きな作家が書いてるから」


私が新体操を好きなように、彼も本が好きなんだ。
そう語る結城くんの瞳はキラキラと光っているようにも見える。


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