This is us
「小田切!集中して。腕が曲がってる」
「あ、すみません!」
リボンが思わぬ方向に飛んで行ってしまい、曲が止められた。
「もう一回お願いします」
深く頭を下げると、先生が“さっきのとこから始めるから戻って”と指示を出す。
ぴりぴりとした空気が張り詰めていて、気付けば練習を終えた男バスまでシン…としてこちらを見ていた。
ごくりと唾を飲み込んで。
「曲入ります!」
前田先輩の声が響いた。
指の先から、爪先、全てに力が入る。
リボンが綺麗な螺旋を描き、それぞれが動き出した。
マットの上は、私の憧れだった。
部活に入って、初めて先輩達の団体を見た時、全身に鳥肌が立ったのを覚えている。
みんなみんな、輝いていた。
ふわりと舞うジャンプ、手具交換、初めて見る演技構成。
その一つ一つに、新体操の魅力と美しさを感じた。
私もいつか、あんな風に踊れる時が来るのだろうか。
そんな一抹の不安を抱きながらも、新体操への楽しさと憧れは加速していって。
バレエとはまた違ったアクロバティックな技や、動きを覚える度に、嬉しさが重なった。
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