This is us


さとりから終わったとメールが入って、俺は図書室を出た。

腕時計はまだ五時半を少し過ぎたところで。
足早に校門前へと歩いていく。

「結城くん、待っててくれてありがとう」

少し遅れてさとりが部室棟から走ってきた。
胸下まである長い髪が、さらさらと乱れて。
俯いた彼女の顔を隠す。

「いや、ゆっくり二人で会うのは久しぶりだな」

「そ、そうだね」


耳に髪をかけて、さとりは嬉しそうに微笑んだ。走ってきたせいか、ほんのり頬が赤く染まっている。

無言で歩き出したけれど。やっぱり彼女の横顔は、どこか悲しそうで何て声をかけていいのか分からない。

そう考えていたら、さとりが沈黙を破った。


「結城くんのお父さんて、どんな人?」

「親父?」

俺は突然親父の事を聞かれて、拍子抜けする。

「うん」

「俺の親父は、酒が好きで旅行が好きで…まぁ能天気と言うか、マイペースな人だな」

「へぇー…お父さんの事、尊敬してる?」

「そうだな…年末にバイトした時、金稼ぐって大変だって思ったし、親父は毎日仕事して家族食わしていくんだから、やっぱすげぇなとは思うけど」


さとりは相槌を打ちながら聞いてくれる。何故そんな事を聞くのか。

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