This is us
「悪りぃ、聞いてなかった」
「やっぱり。さとりちゃんとはどうなの?」
言葉に詰まる。
なつめの前では、誤魔化しが効かない気がして。
「まあ…普通」
「それは絶対何かあった顔」
なつめは携帯を触りながら、チラッと俺を鋭い瞳で見た。
「人と関わるって…やっぱ大変」
「なーにそれ。確かに関わらなければさ、傷付くこともないし、辛い想いもしないかもしれないけど…」
なつめの言うことはもっともだ。
けれど、俺はそうやって生きてきた。
人との関わりを避けて、誰にも心を開かずにここまできて。それが楽だと思っていた。
佐々木やさとりに出逢わなかったら、きっと俺は何も変わらないままで。
誰かに自分を知ってもらおうとか、誰かの力になりたいだとか考えなかったと思う。
けれど、その反動を恐れている自分はまだ変わっていない。裏切られたり、必要とされなかった時に傷付くことへの恐怖は未だ拭えていないのだ。
誰だってそうやって生きているはずなのに、自分だけ誰より臆病なのは、俺が今まで築けなかった人間関係にあるんだと…
「分かってるんだけどな…」
自業自得。そんな俺が、今更誰かと関わりを持つのはやっぱり手遅れなのか。
「蓮は変わったよ。でも、今は一人じゃないじゃん!だから、例え辛くなっても乗り越えられる力があるんだよ。そうやって逃げたら、また昔の蓮に逆戻りになっちゃうよ?」
なつめは、俺が思っている以上に俺を見てくれていたんだと気付いて。
「そうだな、ありがと。本当、お前にはいつも歯が立たない」
なつめは明るく笑って、頷いた。
本当に、幸せになって欲しい。
誰よりも。そう強く心の中で願った。
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