This is us
やっと掴んだはずの幸せは、砂のようにさらさらと指の隙間をすり抜けて落ちていく。
「いいんだよ、気にすんな」
「いや、気になるって。めちゃくちゃ心配だし」
必死に迫ってくる佐々木に、改めて嬉しさが込み上げる。
「心配かけて悪りぃな」
そう言って俺は佐々木の肩を叩いた。
佐々木はそれ以上何も言わない。
人を好きになる事は、思っていたよりも単純で温かくて、今までに感じたことのない幸せに悪くないなんて思ったりした。
けれどその反面、苦しくなったり頭から離れなかったり、胸の奥がじりじりと焦げるように痛む感覚もあるのだと知った。
ただ好きなだけでは、うまくいかないのか。
さとりと俺は、同じ方向を向いていたのか。
今となってはそれさえも、分からない。
何でだろう。そうやってモヤモヤと考えているのに、彼女の眩しい笑顔が浮かぶ。
抱き締めたい。くだらない事で、笑いたい。
もっとあいつの笑顔が見たい。
メールを打つ指と裏腹な感情が、波のように押し寄せた。
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