This is us


「えっ…待って。どういうこと!?何があったのさ」

佐々木は動揺を隠せず、俺の腕を掴んだ。
その瞳の色は、真剣で真っ直ぐで。

こんなに心配してくれる佐々木に、少し安堵する。


「…うまく言えねぇけどさ、大切だから自信ないっていうか。傷付けたくなくて」

「何だよそれ。傷付けたくないんじゃなくて、ただ単に蓮ちゃんが傷付く事を怖がってるだけだろ?」

俺ははっとして目を見張った。

"逃げてる"

「自分の心の壁、破ってさ…。俺は隣でずっと蓮ちゃんを見てきて、本当に変わったし、小田切さんへの想いも知ってる。だからこそ、駄目になって欲しくないんだよ。二人なら、絶対にこの先も乗り越えていけるって思ってる」


「佐々木…」


泣きそうになるのを、ぐっと堪える。
生まれて初めて、感情がストレートに滲んだ。


「まだ遅くない!俺、小田切さん連れてくるから!」

佐々木は全力で走っていって。
俺は何も言えず、その場に留まるけれど。
情けなくて、ずるずると壁をつたって座り込む。

自分がしたことが、一番大切な人を傷付けていたんだと改めて思い知った。

結局誰でもない、自分を守ろうとしていた。


紛れもない真実が胸の奥を占める。

自分の心をそのまま映し出した空の色をぼんやりと眺めて。

一瞬雨が降ったような気がしたけれど、それは自分の涙だった。


.



< 349 / 388 >

この作品をシェア

pagetop