This is us



予鈴が鳴って、もうすぐホームルームが始まる時間だ。

俺は制服の袖で乱暴に顔を拭いて、彼女に何を話そうか考えるけれど。
ごちゃごちゃして想いがまとまらず、一つ溜息を吐いた時、小さな足音が聞こえた。


「ゆ…結城くん…?」


木の影から、そっと姿を見せたさとりを見て思わず息を飲む。

「佐々木くんに行けって…い言われたんだけど」

「あぁ、呼び出して悪い。話がしたくて…その、…聞いて欲しい」


お互いにたどたどしく言葉を紡いで。

さとりは俺の隣に静かに座った。


「自分勝手に別れようって言って傷付けて、本当に申し訳ないって思ってる」

「俺、今まで人との関わりを避けて生きてきたから…正直さとりが悩みを話してくれなかった時、俺じゃ駄目なのかとか…不安みたいなものを感じて、自信無くなった」


さとりは黙って耳を傾けてくれている。


「こんな俺だから、さとりを幸せに出来ないとか…傷付けたくないって思ったら別れた方がいいんだと思った。けど、結局俺は自分が傷付く事を一番恐れていてただそれだけで逃げようとしていたって気付いた」


考えていることを、言葉にするのはすごく難しい。ちゃんと伝わっているか、不安になる。

けれど、口にしなければ届かない。


「俺の気持ちは変わっていない、これからも変わらない。安易に別れようって言った事…許して欲しい」

ぱっと、彼女を見た。

さとりはぽろぽろと涙を流していて。


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