This is us


涙目になって俯く私の手を引いて、結城くんは狭い路地に入った。

「ほら、目ぇ閉じろ」


言われるままに、瞳を閉じる。
胸がドキドキ、ドキドキ高鳴っていく。


ゆっくりと重なった彼の唇。

何度も何度も、落とされるキスの雨。


「…ん」

次第に深くなっていくキスに、吐息が溢れた。

彼の舌と絡み合って、何も考えられなくなる。

息が苦しい。でもずっとしていたい。もっとしたい。

結城くん、好き過ぎて頭がおかしくなりそうだよ。


「……っ」


終わった後、恥ずかしくてそのまま腰が抜けそうになる。

「誘ったの、お前だろ」

結城くんはそんな私を支えて、笑っていた。


「こ、こんな、キス…されると思わなかったの」

「嫌だった?」

私はふるふると首を横に振る。
好きって気持ちがたくさん溢れた。

「じゃあ、またな」

「うん、ありがとう。またね」


結城くんと別れて、マンションへと入っていく。
大丈夫、大丈夫…

ちゃんと自分の気持ちを伝えるんだ。


小さく決心をかためて、玄関のドアを開けた。



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