This is us


「ただいま…」


玄関の隅に、お父さんの革靴が置いてある。
やっぱりもう帰ってきているんだ…

「おかえり」

ビックリして振り返った。
いつも出迎えてくれるのは、お母さんなのに。
気まずそうに立っていたのは、お父さんで。


「夕飯は食べたのか?」

「ううん、食べてない…」


夕飯は家で食べるとお母さんと約束していた。

「夕飯用意してあるから」

お父さんは短くそう言うと、戻っていく。
思わぬ出来事に暫く動けなかった。
部屋に行って皆から貰ったプレゼントとバッグを置いて、私もリビングに入る。


「さとり、おかえり」


「ただいま」


ダイニングテーブルには豪華な料理がたくさん並んでいて、お母さんはが笑顔で迎えてくれた。

なんだか、つんと鼻の奥が痛くなる。

「ほら、早く座りなさい。これね、全部パ…」

「いいから」

お母さんの言葉がお父さんの咳払いに遮られて、最後まで聞くことができなかったけれど。

もしかして…


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