This is us



一瞬、何が起きたのか分からなかった。

マットが頬に触れていて、皆が周りに集まってくるのをぼんやりと眺める。


「さとちゃん?!大丈夫?!」


「…うん」


夢中になりすぎていた。
突然夢から覚めたような、不思議な感覚に麻痺しながらも体を起こす。

「小田切、足見せて」


先生が素早くふくらはぎから、足の甲まで指で押して確認をとった。少しだけ小指のつけ根が痛んだが、特に異常はなく。

「重心がズレて、バランスを崩したみたいね。怪我がなくて良かった。もう今日は外で柔軟して整えておきなさい」

「はい。すみません」

私はマットから降りて、柔軟体操をすることにした。皆に迷惑がかかってしまって、苦しい。

こんな些細なミスで、最後の大会を台無しにしたくない。気を付けなきゃ…


集中していたつもりだったのに、さすがに凹む。

頑張って上っている坂で、石に躓いて一気に下へコロコロと落ちていくみたいな気分だ。

坂の向こうを見ることさえ出来ずに。

深い溜息が出てしまう。
頑張ろうとする程、うまくいかないものだと知っているけれど。

やっぱりいざこうなってしまうと、辛いものがある。



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