This is us


「ふあ〜…」


大会当日。会場行きの電車に揺られながら、大きな欠伸がとまらない。


昨日結局家に帰ってから裁縫に時間を費やし、終わった時には日付が変わっていた。


優花が手伝おうか?っと呆れながら言ってくれたけれど、甘えるわけにはいかず自力で頑張ったんだ。



「ふあ〜あぁ…ねむっ」


「さっきから欠伸し過ぎ」


隣に座っている優花が、私の鼻を摘んで言う。


「んぐぐっ」


「だから手伝おうかって言ったのに」


そして絆創膏だらけの私の指先を持ち上げて、まじまじと見つめた。


「自業自得だもん。優花にまで迷惑かけらんないよ」


「左手だからよかったものの、右手だったらスティック持ちにくくなってたじゃない。滑って落としたら減点だよ?」



「まぁね…ってプレッシャーかけないでよぉ」


電車が会場に近付くにつれて、緊張がじわりじわりと増していく。


自分があの舞台に立つなんて、想像つかなくて。


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